日本スクリーニング研究所について
新生児マススクリーニング検査は、生まれて数日以内の赤ちゃんを対象に、早期発見早期治療が必要な疾患を診断するための検査です。日本では1977年から開始されています。
最初は6種類の病気(フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症、ガラクトース血症)を対象として開始されました。
その後、診断治療の技術の進歩もあって、新生児マススクリーニング検査で診断されている疾患は20疾患までふえています。
このようスクリーニングの発展をさらに応援したいと考え、一般社団法人 日本スクリーニング研究所を設立しました。さらなる新生児マススクリーニング検査の発展に寄与したいと考えています。
これまでの活動では、熊本大学医学部小児科、一般社団法人日本小児先進治療協議会、NPO法人 IBUKI(おもに福岡県で活動しています)、一般社団法人希少疾患早期診断ネットワーク(全国的に活動しています)等と連携し新しい検査の開発研究を含めた活動を行っています。
さて、ライソゾーム病のスクリーニングについて振り返ってみますと、まず熊本大学小児科が中心となって、2006年熊本地域でファブリー病の新生児マススクリーニング検査を開始しました。ついで2013年にはポンぺ病検査を追加しました。
2014年には福岡市域でファブリー病とポンぺ病検査を開始され、翌2015年筑豊地域、2017年北九州地域、筑後地機へと福岡県全域で検査されている状況です。これには福岡大学をはじめ福岡地区の専門家の先生方のご尽力がありました。
最近では、2016年からゴーシェ病、ムコ多糖Ⅰ型とⅡ型の検査も可能となっています(熊本地区)。 これらの結果は定期的に皆様に公開されています。熊本県内での検査状況は、日本小児先進治療協議会発行の「ライソゾーム通信」を、福岡県内の検査状況は、NPO法人IBUKI発行の「IBUKI通信」をご覧ください。
日本スクリーニング研究所が目指すところ
フェニルケトン尿症に対してフェニルアラニンの摂取を制限する治療が始まったのは1950年代でした。これは遺伝性疾患に対する本格的な治療方法の始まりでもありました。その後、希少な遺伝性疾患の治療は必須の栄養素を補充する食事療法から、薬物治療、臓器移植の応用へとすすみ、さらには酵素補充療法が20年以上前に始まりました。現在では一部の疾患では遺伝子治療の臨床応用が進んでいます。
現在では希少な遺伝性疾患の治療では食事栄養療法、薬物療法、臓器移植、造血幹細胞移植、あるいは遺伝子治療などの多彩な治療が多くの患者さんの生命を救い、生活の質の改善に役立っています。
これらの治療方法を有効に活用するには新生児期にスクリーニングを行い、早期発見を実現し、早期の治療を応用することが重要です。早期に治療を開始することで、QOL(quality of life)が改善し、生命予後が改善することは多くの疾患で示されています。
世界をみると、アメリカや台湾、韓国で希少疾患の新生児スクリーニングが進んでいます。しかし、ライソゾーム病、免疫不全症などは、わが国ではまだ一部の地域でしか始まっていません。脊髄性筋萎縮症は近年、新しく治療方法が開発された疾患であり、米国、台湾ではすでに新生児スクリーニングが始められています。
一般社団法人 日本スクリーニング研究所は、わが国における新生児スクリーニングの発展を目指した活動を行っています。